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※画像および文章はUNKNOWN Live magazineに帰属し、断り無く2次使用する事などを禁じちゃいます。

UPDATE:2007年03月02日

去年の 11 月。僕はある男と話していて思わずお願いしてしまったことがあった。
その男、廣田鉄平はMOSS SNOWBOARDS のプロライダーで、今までに 2 本のシグネイチャーと 1 本のデザインを手がけている。もともとは関西の人間なのだが北海道の雪に魅せられて移り住み、今ではすっかり北海道の人間となっている。

その鉄平に北海道での生活や向こうの雪の話を聞いていたら、どうしても自分自身で実際に体験してみたくなってしまい、ハイシーズンに訪れても良いかと頼んでしまったわけだ。 もちろん彼は快く了承してくれた。
夢の北海道生活体験記!!
1 月中旬の金曜日、ついにその日が来た。僕は仕事が終わるとすぐに羽田空港に向かい、北海道へ飛んだ。
北海道で鉄平は、大田ゆうぞう a.k.a パッキーと一緒に家を借りて住んでいる。パッキーも元々は関西は京都の出身で、鉄平と同じ理由で北海道人になったらしい。僕が行ったときには 2 人の他にも茂木“モテッキー”靖俊( UNKNOWN ) JT ( ATOMIC )が一緒に住んでいた。


前日に雪が降った後ということもあり、初日はルスツリゾートへと向かった。 ルスツは雪が降った後のツリーランなら一日中パウダーが味わえる山らしい。

北海道クルーは前日の夜に到着した僕に配慮してか、出発時間を少しゆっくり目な時間にしてくれた。ただ撮影のあるクルーはもちろん朝早くに出発していた。

お世話になっている家から車で約 1 時間半ほどの所にあるルスツに着いた頃には、途中から降り出した雪も止み、見事に晴れていた!

準備を終えてゴンドラで山頂に向かい出すと北海道クルーは雪のつもり具合を観察しながら、どこからどの様に滑りだそうかを話し始める。どうやらやはりツリーランでパウダーを攻めていき、光が当たり出す最高の時間帯に最高の場所を目指すようだ。

ゴンドラを降りると澄み渡った青空とまっ白な雪の大地が待っていた。しっかりとバインを締めて、いざルスツの雪の上へ!

北海道クルーの“こっち!こっち!”というジェスチャーに従うと、さっそく林の中へと導かれた。「え〜!?ツリーの間隔狭くない!?」慣れていない僕の目にはそう映ったが、北海道クルーはまるでツリーなど生えていないかの様にスイスイと林の中へ滑り入っていく。
“みんなを見失わないようにしなきゃ!”と注意しながら林へと踏み入ると、そこにはすでに極上のパウダーが待っていた。「うお !? 軽 !! 」ルスツのパウダーは思ったよりもはるかに軽かったが、足下のパウダーの感触にばかり気を取られていると、迫り来るツリーに体当たりしそうになる。何とか切り抜けみんなの待つツリー外へ出ると喉がカラカラになっていた。恐らく極上のパウダーの感触にあっけにとられていたのと、ツリーの間を縫うのに必死で口が開きっぱなしになっていたのだろう。

それでも何本かツリーランをして慣れてくると、北海道クルーと自分のツリーランの滑り方の違いを観察する余裕が出てきた。自分なりに気付いたことがあり、真似してみるとさっきまでよりはツリーランがしやすくなった。“やっぱり上手い人達と滑ると勉強になるな”などと思いながら、僕は圧雪バーンに出てからも板の使い方を確認しながら滑った。


そしてルスツの極上パウダーを思いっきり楽しめるようになってきた頃、「ほな、そろそろ行きますか!」と北海道クルーの一人が言った。さっきまでとは違う林をツリーランしながら進むと、視界の下の方からノートラックのうえに1本の木も生えていない、まさしく面ツル1枚バーンが広がっていた!!テンションが一気に上がる!

みんなが見守るなか、一番最初に突っ込んでいったモテッキーが気持ちよさそうにスプレーをあげ、「うおーーー!!」と叫ぶ。それを見た僕たちは顔を見合わせ、ニヤリとした。

「Pさん、ええで!」
いよいよ僕の番がまわってきた。まだまだノートラックに近いそのバーンを、本州からトリップに来ている僕に譲ってくれたのだ。最高の思いをさせてくれようと。
「じゃ・・・じゃあ、どうも」などと、うわずった声で返事をしてから僕はそのバーンへとスピードを上げて突っ込んだ!

その瞬間目の前に広がった、大自然が作り上げたまっ白でまっさらな光景と、カラダ全体で感じる浮遊感に僕も思わず、「お、おォォォ〜〜!」と声を上げていた。
それからは面ツルバーンが終わりツリーの間に先に滑ったモテッキー達の姿が目に入るまで、僕は無我夢中で滑り、最高の雪の感触を楽しんだ。本当に、本当に最高の1本だった。

後から滑ってきたみんなも辿り着きハイクとトラバースをしながら戻るとき、山のハイクに慣れていない僕はゼイゼイしながらも、さっきの至福の一時を思えば全く苦ではなかった。

いや、むしろまっ白と、まっ青と、少しの緑があり、そして少しの風の音がするそこにある大自然を五感で感じ、楽しかった。
ルスツリゾート

それからも北海道クルーが「最高のデザート」と言う場所を何本かを滑り、たっぷりとパウダーを楽しんでから初日を終えた。
帰りにはルスツ近くにある「キノコ王国」できのこたっぷりでアツアツの名物・キノコ汁(なんと 100 円!)を飲んでキノコの試食をしまくってしっかりとおみやげを買い込み、仕上げに温泉にとっぷりと浸かって帰路についた。


その日の夜、 北海道クルーが2 〜 3 日前から天気の状況や雪の具合を予測して計画していた旭岳でのセッションを、翌日に決行することが決まった。
大雪山・旭岳 ― 北海道のほぼ中央に位置する 2,000m 級の山々が 50km にわたって連なる大雪山脈の中でも最高峰の 2,290 mを誇る山。北に位置するため本州の 3,000 m級の山々に匹敵する高山環境のため高山植物群落の多様さやスケールも大きく、日本一。その巨大な庭に咲き乱れる花々のような姿に先住民のアイヌの人々は、「カムイミンタラ(神の庭)」と呼んでその美しさを讃えた。しかしその冬季の高山環境は気象的にも非常に厳しく、訪れるものに容赦なく脅威を与えることも少なくない。

そんな山を滑るのかと、僕は少し緊張しながら眠りについた。



翌日の朝は早かった。旭岳へ行くということで集まった北海道の面々が、早朝に迎えに来てくれた。ただ、この時も撮影クルーは一足先に旭岳へと出発していた。

高速を飛ばし、一路旭岳へと向かう。北海道はもちろんのこと、高速道路も延々と真っ直ぐだ。

出発して 3 時間ほどして旭岳へと上る道路の入り口に着いた。

初めて見る旭岳はまっ白なその姿が朝日に照らされていっそうと際だって悠然とそびえ立ち、少し恐ろしく見えた。
ロープウェー駐車場から見る旭岳。天気も最高!
旭岳ロープウェーに続く曲がりくねった上り坂には道路の真ん中に堂々とカメラを構えたおじさんなんかもいた。この日の旭岳の姿を逃したくなかったのだろう 、一生懸命に位置取りをしていた。

しばらくその坂を登り、長い道のりの末にやっとこの日の目的地である大雪山・旭岳へ到着した。

僕達はまず旭岳へ向かって携帯、デジカメを問わずシャッターを切りまくった。それだけ美しかったし、惹きつけられた。

そしてこの山を滑れるんだと思うと無性に嬉しくなり、さっきまでの恐ろしさは期待へと変わっていた。
真っ青と真っ白のコントラスト。たまらん!
しかしそこはやっぱり旭岳。当たり前だが、もしもの時を想定してビーコンを装着する。ビーコンは雪崩に巻き込まれてしまった際に自分の位置を知らせるための信号を発信し、また仲間の信号をキャッチするための道具だ。

ビーコンは初めてだったが、しっかりと身体に装着するとさっきまでの怖さとはまた違う危機意識のようなものが芽生えた。

ここは管理されたスキー場というよりは自然の雪山なのだ。自分やクルーの身を危機から遠ざけ、救い出すためにはそれなりの装備が必要なのだ。

他にもビーコンの示す場所で雪に挿しこんで、雪に埋まった人を探し当てるためのゾンデ、そこを掘り起こすスコップといった装備がある。これらをバックパックに詰め、背負いながら滑る。
ビーコンはこんな感じでしっかりと装着
そして何よりもそれらの道具を使いこなす知識や様々な状況に対応する経験というものが最後には物を言うので、初心者が自然の雪山を滑るときにはそれらを兼ね備えた人と同行するのが鉄則だろう。

しっかりとした装備をして山での危険を意識してロープウェーに乗り込もうとしたとき、ふと僕の目に看板が飛び込んできた。

その 2 つの看板には生き埋め事故の事例と雪崩発生危険区域が書かれていた。それを読んで雪山の危険と、装備・経験・判断力の大切さを再認識した。 無理をしては絶対にいけない。時にはせっかく来た山で滑ることを断念することも必要なのだ。元気でいればまた滑る機会はやって来るのだから。
危険を知らせる看板。しっかりと見ておく必要あり。
太陽を真正面に受ける。
ロープウェイの窓から。人のライン発見!早く滑りたい!

ラジオの流れるロープウェイで山頂に着くと、そこにはまた一段とスケールの大きな光景が広がっていた。 皆、しばし足を止めその光景に圧倒される。 そしてついに良いバーンと良い雪を求めてハイクしはじめた。

15 分ほどハイクし、そこからは細い轍のような道を目的の場所までトラバースしなければならない。
このトラバースが意外にやっかいで、細い道の割にはかなりのスピードが出たり、やたらと起伏が激しかったり、ひとたび足を取られスピードダウンしてスケーティングでもしようものなら、雪面が柔らかくて足を突く度に穴が開いてしまい体力を奪われる。
右からパッキー、カメラマンの司、廣田鉄平、 JT 。 パッキーが手にしているのは Burton のケリーエア!!
こんな感じでハイクして行く
ここから板をつけて見当をつけた辺りまでトラバースする
自分のラインをイメージし、最高にワクワクしている瞬間

そうこうしながらも見当をつけた斜面の手前まで辿り着いた。下を覗き込むと、そこにはスティープでほとんど木の生えていない太陽に照らされたノートラックバーンがあった!

今からここを滑るのだと思うと、ワクワクというかウズウズというか、とにかく興奮した。そして目の前でそのスティープな斜面をスプレーをあげて滑り降りるパッキーの姿を見て、テンションは最高潮に達した。

なぜならそれは僕が雑誌やビデオで見てきて、いつか自分もこんな所を滑ってみたいと思い描いていた光景そのものだったからだ。

そしてついにその世界を自分の視界から見るために、雪上におもいっきり身を投じた!
Yeah !!!パッキー with ケリーエア!
この時の高ぶり、目の前に広がっている光景、太陽の明るさ、雪の感触、そして気持ちよさを僕は絶対に忘れないだろう。
このファーストランはそれほど強烈に僕の脳に焼きついた。そして仲間が嬉しそうに滑っている姿もまた印象的だった。

全部で 4 本滑ったのだが、より良い面を探したり、マッシュを攻めたり、理想のラインを求めてみたりと、そのどれもが充実したものだった。

そして最後の 4 本目。 JT 、廣田鉄平、パッキーと僕の 4 人がトラバースし過ぎて、滑るつもりだった斜面をはるかに通り過ぎてしまい、ディープパウダーライディングと腰パウハイクを繰り返しながら本来のコースに戻る途中にそれはやってきた!
ハイクしながらも時おり立ち止まり、真剣な目でマッシュやラインを見ていた廣田鉄平
旭岳全体をオレンジ一色に染めてしまうような夕日。僕と廣田鉄平はその場に腰を下ろし、しばし見とれていた。

そして廣田鉄平はふと「最高やね、こんなん。ほんま、全てに感謝やわ」とつぶやいた。

どんどんオレンジが強くなっていく夕日をもっと良い場所で見ようと、すぐそこまで来ていたコースに這い出て、 そこで待っていた皆とゆっくりと色の変わっていく夕日を眺めた。
その場にいた全員がその夕日に心を奪われていた。

この日の旭岳は何から何までが、本当に最高だった。
大自然の中に腰をおろし、色づき始めた夕日を携帯でパシャリ
夕日の美しさ、壮大さにみんな板をはずして立ち尽くす



最終日。僕はパッキー&モテッキーと一緒に、以前から食べたかった札幌のスープカレーを食べて(札幌 MEDICINEMAN の限定シーフードスープカレー最高!)から千歳空港へ向かった。

僕が金属探知機にひっかかるのを期待して、最後の最後まで搭乗口を覗いていたパッキーとモテッキーに手を振り飛行機に乗り込む。
シートに座ると今回の短い、しかし内容の濃すぎた北海道トリップを振り返った。

3日間という時間は本当にあっという間だったが、北海道に住むスノーボーダーの生活を少しだけかいま見ることが出来た。北海道では良い雪を求め、常にアンテナを張り、自分たちのその日その日の動きを雪に合わせて生活するというスタイルがあった。

まるでより良い波を求めて移動するサーファーのように。しかし雪の多い土地に住み、スノーボードがたまらなく好きであれば、これはごく自然な事なのかも知れない。
こんな北海道での生活を体験した JT は「本州にこの生活スタイルは伝わってないなぁ」と言っていた。

飛行機を待つ間にビールを飲んでいた僕は、あれこれ思い出しているとウトウトし始めていた。
そんな僕の頭には最高だった北海道のパウダーと、一緒に滑ったみんなの笑顔と、廣田鉄平のあの言葉が浮かんでは消え、浮かんでは消え、やがて眠りについた。

「最高やね、こんなん。ほんま、全てに感謝やわ」

編集後記

僕が今回北海道で滑ったのはたった2日間という短い期間でしたが、本当に貴重な体験をすることが出来ました。
そんな経験が出来たのも、北海道で出会った人たちのおかげだと思っています。
鉄平君、パッキー君、モテッキー、JT君、和尚君、エリックちゃん、はるちゃん、ぷりお君、つかさ君、ノリコねーさん、ミキちゃん、つかさ君、英一君、本当にありがとうございました。 そしてもちろん北海道の大地にも感謝です。

経験未熟なこんな自分の体験記でしたが読んでくれてありがとうございました。これを読んで少しでも何かを感じたり、想像したり、思い出したりしてもらえれば嬉しい
です。
100年先の北海道でも最高の雪が降っていますように!



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